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星の子のbutasuのレビュー・感想・評価

星の子(2020年製作の映画)
3.5
宗教二世の少女を描いた作品。宗教にのめり込む親に反発し家を出ていった姉に対し、妹である主人公ちひろの立場は何とも微妙なところ。宗教に怪しさは感じているし、世間から自分たちがどう思われているかということもわかってくる。けれども両親は心からそれを信じていて、家族が、娘が、幸せになってほしいから、今日も儀式を欠かさない。この両親に一切の悪気がなく、愛しかないところが本当に切なくて苦しい。両親が宗教に嵌ったきっかけが赤ちゃんの頃のちひろの病気だっというのも、より苦しい要因。学校では好きだった先生に宗教のことをイジられて涙を流すが、そこから救い出そうとする伯父一家の助けをちひろは受け取らない。宗教のイベントも優しく温かいものに見えるが、裏には不穏な噂も聞こえてくる。全体的にバランスの取り方が絶妙な作品。すべてが主人公の目線で捉えられており、彼女の知りうる情報だけで世界が構築されている。

セリフ量が少なく表情のみで演じる難役を、芦田愛菜が見事にこなしていた。岡田将生は相変わらずペラいクズをやらせると一級品であり、キャスティングが上手い。黒木華も流石の存在感だった。

最終的にちひろがなにか答えを出したりはしないまま、この映画は終わる。両親からの愛を一心に受けることで身動きが取れなくなってしまっているようにも見えるちひろだが、どうかそこから抜け出して幸せになってほしいと願わずにはいられない。きっとあの両親なら、すぐには受け入れてくれなくても、きっとちゃんとちひろの幸せを願ってくれるはずだから。
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