矢吹

ダンシングホームレスの矢吹のレビュー・感想・評価

ダンシングホームレス(2019年製作の映画)
3.7
劇場で予告編を見て、タイトル知って、すぐに見にいきました。気になりすぎた。

ダンス集団「新人Hソケリッサ!」の密着ドキュメンタリーです。
こんなもん、負け組じゃないですか。歴とした。
働くよりもやりたいこと優先して、
結局、路上生活になって、
それでも、俺は今の生活で満足してんだって、
あの時ああしてればって思いに必死に蓋してさ、生きてんだぜ。
病気になったとか、働けなくなったとか、仕方のないタイミングの悪さとかはあるにしても、
もちろんそんなもん含めて自己責任でしょ。
そんな彼らの生き方に、現在のダンスを打ち破る可能性を感じた、元大御所ダンサー兼振付師がさ。善意で、ホームレスを集めて、ダンスを教えてるんですよ。
やりたくない人にはやらせない。
来たくなくなったらこなくていい。
来るもの拒まず、去る者追わず。
表現であり、自由であるというダンスのあるべき姿を求めてね。やってるわけですよ。
「社会のルールのほうがいいですか?」なんて言っちゃいながらさ。頑張ってんだよ。
でも結局、グループとしては、
金になんねえって困ってんの。
社会のルールから抜け出せないの。
そこのバランスってなかなか見つかんねえよなって、思いますよ。
人が集まるような、お金が集まるような、
上手いダンスとはなんなんだろうって話よ。
こんなもん芸術大体においての主題だろう。
作品としては、そこの集団にとっての折り合いは、これからの彼らの活動の中に見出せってことなんだけどさ。
いざ、よくわからん地域のよくわからんフェスみたいなものに出てみたら、いまいち盛り上がらないし、ヤジだらけだし。
YouTubeに動画上げても、批判されるし。
黙らせるだけの力がないのか、それともこれを許容できない人がおかしいのかって話はおいといてよ。
それでも、もしも見せる商売やるなら、そこはさ。って話なんだ。そうなんだけど、
「動ける体があるなら税金払ってください。」ってコメント、辛辣すぎない?
笑いながらも、なんか俺も傷ついたわ。
ぐうの音も出ねえし。
自分が自分でいられる場所。
を自己中心的に求めることは、罪なのだ。
趣味と仕事問題と収益と夢問題ですね。
集団として、ひいては個人として何を求めるかですよね。
そんな中で、新人Hソケリッサのメンバーは
ダンスが好きで続ける人もいるし、お金にならねえとやめる人もいるし、
彼女が欲しいとやめるおじいちゃんもいる。
要はそういうことですよね。
ドキュメンタリーとして、ソケリッサの活動を通して見えてくる、一人一人の話はシンプルに面白かったです。
理由なくホームレスな人なんていませんからってセリフにもあるようにね。まあ理由なくホームレスじゃない人もいないからな、当たり前だよな。
前述した、彼女が欲しくてやめた人もかなり味があって良かったんだけど、
別の人が語る、
「逃げ続けた人生で、あとは死しか逃げ場がない。体を使い切りたい。」
って言うの、めちゃくちゃかっこ悪くて、人間臭くて好きでした。
過去のことぐだぐだ言ってもしゃーないで。精神で、やれることやらないとな。
ホームレスの人の話なんて聞く機会ないもんで、とても勉強になりました。
彼らは家がないだけだ。プライド持って、食うもん食って、一応は働いている。
当たり前なんだけどね。恥ずかしながら、そうなんだなあって思っちゃうぐらい、何もみてなかったんですよ。だからなんだって言われたら、何にもならないけども。生き方の問題ですね。
して、肝心のダンスはと言うと、かなり好きでした。なによりも、なにやら壮大な、良い曲を使ってるんですよ。曲がいいです。
その辺で拾った服を着て踊る姿もテクニックなんか微塵も感じないけど、人間存在の力強さを感じる。これも曲がいいからってのはあると思うけど。
だからこそ、伝えることの難しさを感じます。
身体表現としてのかっこいいダンスで、かつ、人生をのせた踊りとはどこで差が出るのか。
プロはダンスだけに時間をかけて生活してるから、それはそれで生き様が乗っかるんだろうしなあ。別物として考えるべきなんですかね。
逆に、彼らにしかできないことでもあるし。
あとはお金にするか、しないかですね。
というか、寿命を何に使うかですかね。
そりゃコミュニティ、コミュニケーションにしたいなら自分が折れないといけないことの方が多いでしょう。体だって自由じゃないし、言葉でさえ選ばないといけないんだから。
ダンスって奥が深いなぁと思いました。
そもそも、全く持って、ダンスのなんたるかを知らないので、あれなんですが。
このままだと、普通に社会のルールのほうがいいじゃんってなっちゃうから、なんとか、頑張ってほしい。
なによりも、撮影してる方がかなり中立なカメラだったことが、とても良かった。
ラストの最大の見せ場、このために今までの全てがありますって言うほどの、踊りのシーンを編集しちゃうのはあんまりどうかなと思ったけど。
YouTubeで見ろってことですかね。
調べたらあんまり動画ないけどさ。
作品自体は、見て良かった。
いろんなものに対して、作ってくれて良かったと思います。
矢吹

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