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プロミシング・ヤング・ウーマンのmimagordonのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

とにかく刺さった。強烈に刺さった。自分が男性でいるのが怖くなった。
でも「じゃあ、女性にとって最悪の悪夢は?」。男性のそれはせいぜい手枷をかけられて過去の醜態をさらされるくらい。過去は都合よく忘れられ記憶も同じように塗り替えられていく。女性にとっては?ラスト、普通のサスペンスだったら5秒くらいで終わりそうな枕で呼吸を止めるシーン、少なくとも1分くらいはあったように感じたのは私だけだろうか。つまり、男性優位の社会の中で男性有利に作り替えられていく過去の中で、息苦しさを感じ続けること。そしてその「過去」の体験は、時に身近な当事者にさえ忘れ去られ、「社会に馴染めない」というレッテルを貼られさらに息が苦しくなっていく。また、過去を悔やみ、反省し行動を改めようとしている男性は、これまた理由をつけて社会からはぐれ者扱される。

恐らくビデオには、キャシーが殺された映像が映っているのだろう。ただそれでどうなるのだろう?犯人に「正義」は下されるのか?「SNSで一つ泥酔した写真を持ち出すだけで陪審員は男性側につく」ならば、ナース姿のキャシーを見た陪審員はどう思うか?「誘惑しようとしてるじゃないか!」なんて声が上がりそうだ。キャシーの過去など何も知らず、きっとろくに知ろうともしない。だって、「ナースのコスプレしてるなんて、いかにもじゃないか!」なんて。

エンドロール前のラストカットで映るライアンに送った笑顔の顔文字。「あれ以来ニーナにはいつもあなた(アル)の名前が付きまとった。今は私以外誰も覚えてない。でも本来はあなたにニーナの名前が付きまとうべきじゃないの?」。ライアンにはずっとキャシーの名前が付きまとう。最期まで。或いは彼もまたアルと同じなのか。そうでないことを祈るけど、そう言い切れないところが心苦しい。

この映画を観たあなたが男性で、私のように息苦しさを観賞後に感じたなら、自分の過去と対峙することになるだろう。「何もなかった」なんてことはないはずだ。自分の過去と現在を見つめなおし、襟を正すことから始まる。もし何も感じなかったとしたら...救いようがない。ごめんなさい。
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