【舐めてたキャンディが毒入りだった】
期待していたが、期待を外す所が面白く、結果的に期待以上でした。(当時)昨年の賞レースを賑わせていたが、受賞関係なく見応え多々。
いわゆる“レイプリベンジもの”で、物語は一見、よくあるものだし、所々トホホ展開。…なのに、最近見たどのアメリカ映画にも似ていない。先が見えない。この新たな才能、新たな女性監督の登場に、拍手です。
女性に張り付けられた“当り前”を剥がし、このように傷口を見せる巧さ。いま、自国で起きていることを感覚で漉して掬い、物語化できるアメリカ映画はやっぱり、底力ありますね。
ヒロインに定番セクシー女優でない、キャリー・マリガンを配したことが巧い。実年齢とのギャップ、役柄との違和感がプラスに転んでいる。
“やろうと思えば誰でもできるが、やれば病む”復讐行為の綱渡り感は、彼女ならでは。
味付けは深刻なのにポップ、という底意地悪さ。
楽しいが、さらりと醸すのでかえってコワイ。パリス・ヒルトンの歌声ペラさが、後でホラーに化けるなんて。
弱きバトルヒロインが、最後に仕掛けた勝負の行方。一瞬、またも女性の“当り前”に隠蔽されそうになるが…という居心地悪さに、本作の矜持を見ました。どんどん、腐った男社会を中和しておくれ。
手放しの傑作とは言えませんが、刮目作ではありました。映画自体が少ないせいもありますが、個人的には傑作認定したくなったのでした。
少なくとも、“ラストナース”はクルエラよりも強烈だ。
<2021.7.18記>