ひのらんげ

プロミシング・ヤング・ウーマンのひのらんげのレビュー・感想・評価

3.0
感情のきわどいラインを往来させられる、繊細なストーリーに脱帽。

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学生時代のキャシーは親友をレイプによって失った。時を経て熟成された怒りは順番に、順番に、順番に復讐をはじめる。

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I
反論の余地のない相手を言い負かして冷徹な拳を下す。ちょっとやりすぎなのでは?と思うところが、なぜか、少しだけ感情移入してしまいます。なぜだろう。一線を越えそうで引き戻される。

II
復讐が正論と絡み合って渦となる。傍観していた者、社会的に成功した者の言い逃れの醜さが、サイコパスと化した彼女の吐く言葉とブレンドされて、ぐるんぐるん私の感情は迷子になる。

III
ある日のひどい出来事によって、その後、復讐のワンテーマに生きて、長い年月を経て全うする。彼女の内面には(うっすいオブラートに包んではいるが)堅く尖ったような怒りが君臨的支配をしていて、ちょっとしたことで簡単に溶け出しては理性を忘却させるが、何年も何年もシミュレーションを重ねているから、理性を感情がコントロールするような不思議な振る舞いをする。彼女はまるで練習しすぎた演劇のように振る舞う。

IIII
パステルカラーの静かな狂気から、凶変の深紅へ。そしてどす赤いラスト。後天的にサイコパスとなった彼女に、いつのまにか私は同情している。だめだめ、と我に返る。だれかに強く感情移入することはなく、ひらりひらりと感情が誘導される、不思議な物語でした。

感情があっちこっちと。やばい方向に踏み出してはまた引き戻されるきわどい往来。

(書くのも怖いけども)彼女には良かったねと言ってあげたい気もするが、やっぱり言いません。そんな映画。
ひのらんげ

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