浪川リオン

映画 えんとつ町のプペルの浪川リオンのネタバレレビュー・内容・結末

映画 えんとつ町のプペル(2020年製作の映画)
1.6

このレビューはネタバレを含みます

冒頭のハロウィンダンスの部分から制作サイドとの感性のズレをまざまざと見せつけられ、それがエンドロールのうざったい歌までずっと続くひどい90分だった。

主人公ルビッチとその父が『星を見たい(見せたい)』という夢を持つ事と、権力者が今ある秩序を保つ為にそれを封じるという図式が全くしっくり来ない。
『星がある=煙突町の外にも世界がある』という証明にはならないのでは? という疑念が映画冒頭から薄靄のように漂っていて、劇中の煙と違って最後までそのモヤは晴れないままだった。

権力者が掌握している閉ざされた世界の秩序を守る為には、星を隠す為に煙突から煙を吐かせ続ける事ではなく、例えばだがこれまでの人類史を全て新しく書き直した上で、街の外界には何も無い、海の外に人はいないという洗脳を叩き込む事こそ成すべきことだったように思える。

星(夢や理想)・空の煙(夢を追う人を嘲笑する風潮)・というメタ表現なのだろうが、「こういうシーン、絵面を作りたい」という気持ちばかり先行してしまっていて、物語の土台たる設定部分がボロボロのガッタガタなのでクライマックス場面でも気持ちが入らないどころか完全にしらけてしまって全てが茶番劇としか思えなかった。

異端査問会がプペルを付け狙う理由付けも、煙突掃除夫の親方がプペルを匿おうとする理由もそれぞれ弱く、ルビッチものんきにプペルを仕事場に連れていこうとしたりするし各キャラクターが必然性の弱い行動しかしない為緊迫感が無く、のんびりとして退屈なシーンが多かった。劇中歌が挟まるシーンは「また歌か」とげんなりした。

断崖に囲まれて窪地になっているえんとつ町の上空に煙が立ち込め続けている理由や、人々が外界に出ていこうとしない理由、またそうさせているえんとつ町独自の宗教観の存在とか、SF的な考証をきちんと踏まえた設定の上で、きちんと専門家の手も加えて脚本を作って欲しかったなと思う。
雰囲気だけで話を作ろうとしてるのが見え見えで、これでは「子供だまし」と言うのも子供に失礼なくらいの出来映えだと感じた。

ルビッチが鎖を登るシーンで入る語りが本当にしつこくて不快だった。映像… 特にクライマックスの星空は本当に美しいのでいっそ音声無しで映像だけたれ流して、ストーリーは勝手に想像してみるのも楽しいかもしれない。

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