しの

るろうに剣心 最終章 The Beginningのしののレビュー・感想・評価

2.8
シリーズが好きでない自分でも、いやそんな自分だからこそ、今回は真面目に観れた。相変わらず説明的でかったるいが、過去作とは良くも悪くも別物。単体で観れば、愛と憎しみの表裏一体性を描くドラマとしてまとまっている。ただ、完結編としてこの位置に持ってきたのが損。

自分はこのシリーズのアクションにあまりハマっていなかったので、ワイヤーチャンバラを推さずシリアスなドラマに振ったのは良かった。剣心が「おろ?」を言わないのも好感。画も夜のシーンや雪山のシーンなど気合が入っていた。

ただ、褒められるのはそれくらいで、とくに面白くはない。アクションでのごまかしが無く、ドラマに集中しているぶん、ストーリーテリングのマズさが純度100%で出てしまったという印象。「とにかく長ーく映して、その後で心情や状況を説明する」という無意味な手法を繰り返す。

巴との話だけ見れば、愛憎の表裏一体性というテーマ自体は面白い。しかし、この描き方がかなり問題だ。なんだか勿体ぶった感じで動作を映すが、結局「一緒に暮らして幸せを知った」だの「愛してしまった」だの台詞で説明して済ませる。作業的なわりに非効率的。

「新時代のため」を何度も言うのがアホっぽい。スケールを大きく見せたいだけで実態を伴わないハリボテ感。そのため、人を斬る/斬らないという剣心の覚悟にイマイチ説得力がない。しかも、それが巴との愛憎の話に接続しない。なぜなら、巴との生活で幸せを知ろうが業に悩まされようがどうなろうが、剣心のスタンスは「新時代到来のために人を斬る」からいっさい変化しないからだ。

新撰組にフィーチャーしているのに終盤はポッと出の全く別の敵だし、その敵が剣心を陥れる作戦もなんだか変にまどろっこしい。この辺りも接続不良をよく示しているだろう。肝心の雪山での闘いは、敵側が圧倒的に有利なのに何故か無駄にいたぶってくるのが不自然。というか、剣心は巴を斬った時そういう状況だったのかよ! 色々と拍子抜けだ。

そう考えると、この時代背景が丸ごと邪魔に思える。結果、そもそも大した話じゃないのに長ったらしく、それなのに肝心なところは説明台詞ばかりで伝わってこないということになってしまう。観客を信用しない回想の多さも健在。

しかも、『The Final』で話を知ってるので余計にキツい。はやく雪山に行ってくれとずっと祈っていた。このことからも、本作を完結編に位置付けるのは意味不明だろう。円環を作りたいのかもしれないが、こういうのはスピンオフか何かでやるべきで、間違っても「完結編」ではない。そのせいで『The Final』に「The Final」感がないし、変に『The Beginning』のネタバレをしているし、誰も得しない。

「シリーズ最高傑作!」とは言うが、個人的にはそもそもその文句にあまり価値はないと思うし、実際、本作は「相対的にマシ」でしかない。しかも、前代未聞のおかしな二部構成のせいでよく分からない終わり方に。なんだか可哀想なシリーズだなと思う。
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