しん

17歳の瞳に映る世界のしんのレビュー・感想・評価

17歳の瞳に映る世界(2020年製作の映画)
4.0
17歳の少女(オータム)の瞳にうつる世界に徹底的にこだわった名作です。キャッチには「勇気に絶賛」といった言葉が目立ちますが、たぶんその見方は一面的だと思います。

むしろ本作が白眉なのは、彼女たちの前に政治や経済、思想が立ちはだかることを生々しく描き出しているところです。ペンシルベニアにしてもニューヨークにしても、彼女たちの前には様々な障壁が存在し、それに対して彼女たちは即時的な解決策にすがり付きます。それは小さな違法行為だったり、リスクのある人付き合いだったり、セクハラなどへの小さな我慢だったりします。そんな小さな解決策が積み重なるなかで、彼女たちの中での社会への不信感は増大します。これは挑む作品であるとともに、彷徨う作品です。では誰が(何が)彼女たちを彷徨わせていのか、深く深く突き刺さります。

自分が17歳の時は、社会や経済が立ちはだかるという感覚を持つことはありませんでした。受験への不安、人生への焦燥感、失恋の悲しさなどは感じていましたし、それ自体は重く大切な感覚だったと思います。しかし社会が立ちはだかる感覚を抱かなくてよかったのは、とても恵まれたことだったのだなと回想しました。

彼女たちの限定合理性をどう理解するか、見る方に大きな宿題を課してくる名作です。
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