mさん

17歳の瞳に映る世界のmさんのネタバレレビュー・内容・結末

17歳の瞳に映る世界(2020年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

面白いというよりためになる
カメラの遊びもないし
時間軸も捻りはない
ただ淡々と少女を寄りで
ドキュメンタリーチックに映し続ける

そして生々しさとリアリティが凄い。
全然フィクションだという感じがしない。
この前見た行き止まりの世界に生まれてと同じくらいリアルに感じる。余計辛い。

リアルに感じる理由は2つだと思う。

まずは役者の演技
感情的に一切ならずに全てに怠惰だったのがこのリアルだった。ミュージカルみたいに誇張して演技すること=リアルじゃないわけじゃなく世界観と演技のスタイルが乖離してるとフィクションだと心が冷める。この世界の雰囲気や、周りの人との演技とのバランスも含めて抑えめな演技はリアルに見えた。で彼女の感情が出るシーンがまたリアル。

長回しの質問シーンで泣き出す部分が
どう見てもリアル。
泣き方もクールな彼女が自分を保つために必死に感情を抑えて、大号泣する一歩手前でめちゃめちゃ戦ってる感じが出て、途中でカウンセラーがいた方がいい?と聞くと食い気味で頷く感じとか自分を守るための強がりと弱い部分が入り混じってる感じがしてすごかった。

次に彼女が本当にこの世界に存在していると
感じるような、カメラの映し方や構成。

カメラは観客の予想を超えて
淡々と映している気がした。

例えばビタミンCの錠剤を何錠も飲む場面は
2錠くらい飲めば、次のシーンに行ってもいい。
でもずっとカメラはそこにいて
彼女が3錠4錠飲むのを映す。
飲むのが苦しそうになってきているのに淡々と映す。こちらはもう辛い彼女を見たくないから次に行ってほしいと思うのにそこからしばらく続く。

観客の予想を裏切って彼女の苦しさを映し続けることにリアルを感じる。本当に苦しいんだなと思うし、そもそも次のシーンに行っても問題ないというのは映画の文脈で、彼女にとっては錠剤を何錠も飲まないといけないよなと思う。

お腹を何発も殴る部分も、実際はかなり長く殴ったんだよなと思う。こういう彼女が本当にこの世界で生きている実感があったのでリアルに感じた。

トイレに行って検査をするシーンも飛ばさないし
全部トイレの中もどこでもカメラが問答無用で入り込む。そのカメラの淡々とした目線がリアリティを増していた。

徹底的に生々しくリアルな映画。
基本的にこういう映画は
楽しめないし、楽しんじゃいけないと思ってしまう。それでいて自分は「映画は娯楽だ」という前提を持って映画を見たい人なのでこういう映画は勉強にはなるけど楽しくはない。という感想で終わる。

ただラストの
手術を終えた主役が
ホッとしたように
なると暗いトンネルから
明るい景色の部分に行って
主人公の気持ちとシンクロして良かった。
mさん

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