rage30

17歳の瞳に映る世界のrage30のネタバレレビュー・内容・結末

17歳の瞳に映る世界(2020年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

中絶手術をする為に旅に出る女子高校生の話。

主人公が中絶手術を受けるまでの道程をドキュメンタリータッチで描いた作品で、現代の妊娠・中絶事情だったり、望まぬ妊娠をした女性の苦境が描かれます。

確か『続・ボラット』でも登場した、中絶反対派が運営する妊娠の検査所が本作にも登場。
「本当に存在するんだな~」という驚きと共に、今回は妊娠週数を誤魔化すという非道ぶりにも驚かされました。
おそらくは中絶が出来なくなるまでの時間稼ぎが目的なんでしょうけど、医療データまで操作するのはアウトだし、一体どんな倫理観をしてるのやら…。

そんな田舎の施設とは対照的に、都会の施設は主人公の事情に寄り添った対応してくれます。
まぁ、当たり前と言えば、当たり前の対応なんですが、そんな当たり前を享受出来ない人もいる…それがアメリカの現実なのかなと。

今まさに中絶禁止法で揺れるアメリカにとっては非常にタイムリーなテーマなわけですが、だからと言って、日本に関係のない話だとは思いません。
人の権利を関係のない他人があーだこーだ言って干渉してくる光景は、日本でも夫婦別姓や同性婚の時によく見掛けましたからね。
そんな政治的な話は抜きにしても、常に男性の脅威に晒され続ける女性の生き難さ…といった部分は、どの国の女性でも共感出来るところではないでしょうか。

また、そうした女性の生き難さを知るという意味では、男性にも是非見て欲しい作品だなと思いました。
性交渉を強制したり、避妊を拒否するのは論外とはいえ、相手の意思…好意すら確認する事なく、体を触ったり、キスをする男の気持ち悪さたるや!
この作品を通して、女性への対応の仕方を学んで欲しいですね。

本作を見ていると、「中絶をするだけで、なんでこんなに苦労をしなくてはならないんだ?」と途方に暮れるわけですが、それでも主人公の心が折れずに頑張れたのは、従姉妹の存在も大きかったのでしょう。
まさに「シスターフッド!」としか言いようのない、柱越しに手を繋ぐ場面は本作のハイライトの1つ。
しかし、そうした世の中の理不尽を何でもかんでもシスターフッドで解決させるのも、如何なものかと思うんですよね。

そもそも、主人公が妊娠を親に言えて、地元で手術を受けれれば、こんな大事にはならなかったわけで。
もっと言えば、男がきちんとしてれば、こんな事態にもならなかったわけで、決して若い女性だけの問題ではない。
親世代であろうが、男であろうが、それぞれが自分達の問題として考える…その為に、こういう映画があるのかもしれません。
rage30

rage30