あさ

17歳の瞳に映る世界のあさのレビュー・感想・評価

17歳の瞳に映る世界(2020年製作の映画)
4.5
今日は覚悟が決まったので見た。劇場で見る勇気がなかった。

音楽も少なく、少女ふたりを追う構成だからか、モキュメンタリーのような印象もあり。決定的な感動を覚えたのは原題にもなっている"Never Rarely Sometimes Always"の場面だった。女医さんが質疑をする声がやけに心に響く。聞いていて落ち着くのに涙が出る。カメラはずっとオータムを捉えている。彼女の表情が質問によって揺らいでいく。
図らずしも今日聞いた話を思い出した。演劇における一人芝居の持つ効果。例えば性暴力を描くにしても映画では実際に被害者が被害に遭うシーンが映ることが多い。それを見た観客は「可哀想」だと捉える。一方、一人芝居は俳優が被害を受けるさまを演じるも、加害者の姿は観客には見えない。被害者が傷つき自問自答していく姿を見て、観客は想像を膨らませていく。自分だったらどうしよう、自分にはこんなことがあったと。
この映画は一人芝居でこそなけれど、同じ性質を持っていたように思う。決定的なシーンはない。彼女を妊娠させた相手が誰かも分からない。けれど彼女にはきっとこんな事があったのだと私たちに強く訴えかける。そして事実なんて全て分からないのが現実だし、すべてを語らないのも良かった。簡単には口にできない、それほどの心境であるからして。

黙って同伴してくれるスカイラーの立場も。バスで身体をトントンと触られる場面も、しっかりと言葉ではなく演技とカメラが不快感を伝えてくれる。宿をボランティアが提供してくれるよと声をかけられたときに、オータムが甘えられないのは「人を頼れない」という意識が強いからなのかもしれないけれど、そこは頼って…と祈るばかりでした。結果としてスカイラーが男性にお金を頼る場面。頭では一番したくない事だとわかっているのに、メイクしてテキストする。彼の大盤振る舞いっぷりはすごいが、じゃあこれくらい良いよね?となるのも、仕方ない、わかっていて声をかけたというのも見ていて辛かった…。

解決はしていない。(この終わり方も心にグッと刺さったのだけれども。)オータムに相談できる家族がいたら、話し合えるパートナーがいたら。でもそんなの誰もが環境に恵まれている訳じゃない。中絶という手段にも、未成年には抱えきれないほどの責任と出費がのしかかる。でもこの選択肢がなければ、どうなってしまうの。出産に伴う身体の負担はやむなしなの?出産費用は?その後の養子縁組の手続きは?「うぶ声を聞いたら変わる」って、育てるの?一人で?すべての人生を変えてまで?いろんな意見があると思うけれども。いろんな考えがあるのは分かるけれども、一身に女性だけが処罰され、負担を強いられることが疑問。とりあえず、お願いだから避妊に対する危機感は女性だけでなく男性こそ持ってくれ。
あさ

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