かなり悪いオヤジ

CODE8/コード・エイトのかなり悪いオヤジのレビュー・感想・評価

CODE8/コード・エイト(2019年製作の映画)
3.5
AIロボットの影響で職を失った超能力者たちの物語。筋肉系、電気系、念力系、読心系などに分類され、日雇いで職をえられるだけまだましという極貧生活。その金欠をおぎなうために、闇市場で取引されている一種の麻薬サイクの原料となる自分達の髄液を売って糊口をしのいでいる。聞くも涙、語るも涙の、救いのない近未来ディストピアなのだ。

映画の出だしを見た時は、このエスパーの皆さんが移民のメタファーなのかなぁと思ったりもしたのだが、ちと違うようだ。実際、移民の方々が携わっているブルシット・ジョブと呼ばれるどうでもい仕事は、AIが普及した後でも残るのではと予想されており、その最下層よりも上の層、特殊な技能や有資格者で現在はそこそこの給料をもらっている中間層のメタファーではないだろうか。

皆さんが勤めている会社でも、リストラのターゲットとなるのはまずこの中間管理職と呼ばれる皆さんであり、給料の安い下っ端をクビにするよりもコスト面では効果絶大。AIの完全実用化によりホワイトカラー業務の代用が可能になれば、真っ先にお払い箱になるのはこういった人達なのである。いわば人事の中抜きがもうすぐ始まろうとしているのである。 

考えてみれば、超能力者集団のマーベル・ヒーローズやX-MENだって、ある意味AIが世間に浸透するまでの繋ぎだった訳で、この映画に出てくるドローンと武装ロボットさえいれば後は用なしの金食い虫。なまじ能力があるだけに一般市民にとっては迷惑千万、とても邪魔な存在なのである。非正規雇用の建設現場で角材運びでもやってなさい、というのが企業の本音なのだ。

電気系の主人公コナーは、同じくエスパーのお母さんが脳腫瘍におかされ、自分の氷系能力が制御できないほど病状が悪化。やむなくヤバい骨髄売買組織のメンバーとなり、母親にはとめられている5級レベルの能力を発揮、銀行強盗を企てる。そこで知り合ったサイク依存の女性ニアの秘密を知ることによって、怒りにかられるまま行動していた今までの自分の生き方を改めるのだ。

かくして強盗事件集結後、超能力者を完全に排除する法案が可決し、何かと寛容に接してくれた韓国系刑事は手柄を評価され昇進、仲間2人を失った念力系のギャレットは裏切り者のボスの後釜にすわり、一命をとり止めたニアは刑務所にいた父親と面会する。母親を喪い、何かを犠牲にしなければ前に進めない(現代)社会のあり方に疑問を感じたコナーは放浪の旅へと出かけるのだ。どこかにあるかもしれない自分の居場所を求めて…