birichina

ほんとうのピノッキオのbirichinaのレビュー・感想・評価

ほんとうのピノッキオ(2019年製作の映画)
4.5
※ ネタバレまではしていませんが、内容には触れています。

マッテオ ガッローネの世界を堪能した◎

グリム童話を始め童話のオリジナルは残酷だったというが、「ピノッキオ」もオリジナルには残酷な要素が多々あるそうだ。そしてオリジナルを読んだ人の話によると、この作品はオリジナルにかなり忠実とのこと。ピノッキオが暖炉の前で居眠りして、脚が燃えてなくなってしまったり、ヴォルペ(キツネ)やガット(ネコ)がピノッキオから金貨を奪うために、木にピノッキオを吊るして殺そうとしたり。(悪党2匹にも残酷な結末が用意されている。) 特に背筋がゾッとしたのは、ピノッキオと友達がロバに変態するシーン。それを見て「かわいいロバちゃん」とほくそ笑む、子供をロバに変えて売り飛ばす中年男の甘ったるい声もコワい。また、「この世界では潔癖な者は牢獄行きじゃ!」というチンパンジー裁判官の前で、ピノッキオがやってもいない窃盗を次々告白するシーンも、ピュアな子どもが大人に矯正されていくようでゾッとする。
このように随所に社会に対する皮肉がちりばめられていて、それを発見するのは楽しい。

ピノッキオ役の少年がとてもいいので、ピノッキオは悪い子なんだけど、そんなことしたらダメ!と応援したくなる。いたずら好きで ずる賢いところもあり、好奇心旺盛でピュアなところもあり、子どもの特性が詰め込まれたキャラクターだと思う。

キャラクターはみな魅力的で、特殊メイクや美術、衣装も丁寧な仕事をしていてすばらしい。作品に流れるどんよりとした色調や空気は、まさにマッテオ ガッローネの世界。童話「ピノッキオ」が書かれたのはトスカーナ州だが、エンドクレジットによると撮影はプーリアでも行われている。
個人的に好きなキャラクターは青の妖精の侍女ルマーカ(カタツムリ)。ウソをつくたびにピノッキオの鼻が伸びるシーンでの彼女の角(触覚?)が見もの。

・ロベルト ベニーニ扮するジェッペットじいさんの登場シーンは少なかったが、存在感があった。
・「ゴモッラ」でチンピラのチーロを演じていた俳優、前半に1シーンだけ出演。
・海でピノッキオを飲み込んだのはクジラではなく巨大サメ。幼少の頃からずっとクジラだと思っていた。。
birichina

birichina