ぽち

カフカ「変身」のぽちのレビュー・感想・評価

カフカ「変身」(2019年製作の映画)
3.4
原作とほとんど同じストーリー展開なので、元が名作不条理小説ということもあり、観応えのある作品となっている。

のだが、やはり映像化に際して問題点が多々あるのも事実。
一番の問題は「虫」のデザインだろう。

カフカが作品を発表するにあたり、表紙に注文を付けた。
それは「昆虫そのものを描いてはいけない」、「遠くからでも姿を見せてはいけない」の二点。

これからも、カフカはあくまで「虫」は抽象的な表現で、具体的な昆虫をイメージさせたくなかったと思われる。
実際今でもその解釈には意見が多数あるほどの作品だ。

しかし、個人的にはカフカ自身は「どんな読み方をしても良いし、不条理な馬鹿話として楽しんでも良い」と考えていたのではと思う。

そう考えると、今作で「虫」を大胆に出したのはアリなのだが、そのデザインとCG映像、動きのショボさはガッカリ。
ここに力を入れてほしかった。

また、原作に忠実なのはリスペクトととらえられるが、時代設定は現代に近くしても良かったかな。

元祖不条理小説の醍醐味を味わえる作品。


余談。
「カフカはこの作品の原稿をマックス・ブロートらの前で朗読する際、絶えず笑いを漏らし、時には吹き出しながら読んでいたという。」
という逸話が残っている。

また
「『変身』の本が刷り上がると、カフカはその文字の大きさや版面のせいで作品が暗く、切迫して見えることに不満を抱いていた」

というから、もしかして本人は笑える話として作ったのでは?と思えてしまう。

まぁ、あの小説を映像化だと、どうしても今作のようなカラーになってしまうのは分かるが、大胆にコメディとして作ればまた違った味が出せるんじゃないかな。

あ、今回調べて一番驚いたのが、仮面ライダーの「変身!!!」ってのはカフカが由来ってことだな。笑
ぽち

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