カタパルトスープレックス

パラダイス・ロストのカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

パラダイス・ロスト(2019年製作の映画)
2.5
福間健二監督作品初体験。正直に言えば、開始30分くらいは「ああ、事故案件だ、これ」と思いました。予告編にすごく惹かれたんだけどなあ、ハズレだなって。厨二病を拗(こじ)らせた映画だなあ...が第一印象でした。

観ているうちに、この映画がなんなのか解ってきました。ああ、これは「映画」ではないんだ、「詩」なんだ。映像のフォーマットを使った「詩集」なんだ。セルゲイ・パラジャーノフ監督作品『ざくろの色』が映像フォーマットを使った「絵画の展覧会」であるのと同じ意味で。

この映画(=詩集)は死者と演者と観客との対話です。カメラは死者の視線です。死者が映画の中の演者を見ている。死者の視点を通じて観客は演者を観察し、彼らの読む詩を聞きます。演者も死者の視線に気がつくことがあります。そして、死者に語りかけます。死者を通じて観客に語りかけます。だから、「第四の壁」とはちょっと違うんですね。彼らは観客に語りかけているのではなく、死者に語りかけているのだから。「生と死の境界線をこえる視点」とはこのことなんですね。語る言葉は詩です。だから、死者を媒体とした詩集なんです。

ボクは美術館やギャラリーに行って絵画を観るのが好きなのですが、詩は嗜みません。ここが決定的な差ですね。多分、詩を読むのが好きな人だったらこの映画は好きなんだと思います。ボクは詩にあまり興味がないのでこの点数。