オールド

三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実のオールドのレビュー・感想・評価

3.8
 途中あまりに抽象論で「これこそ空間も時間もあったもんじゃねー。会話してるように見えて、実際は成り立ってる風に装ってるだけじゃん」と匙を投げ掛けたところに現れた彼。三島を殴れるから云々と壇上に上がったベージュのブルゾンの若者。彼こそが最もまともな語り手だろう。自分の周りの社会やら家族の関係性がまずあって、それを土台に世界がなんやかやと論ずるべきだと。会場の千人が見守る空気のなか、「おれはこう思う」と割って入った脇役の彼こそ一廉の人物であるはずだ。
 この動画を見る限りでの判断だが、芥は時空不在の革命、三島は戻らぬ時空の天皇(または一般意思)という叶わぬ夢を見、外法の暴力に陶酔したい点で変わらない。この二人は革新対保守ではなく、実は改造主義者として同類なんじゃないのか。ただ決定的に違うのは、三島は「おれは日本人でいいんだ」と'関係'(≒共同幻想)に飛び込む勇気がある。制約や宿命を引き受ける度量がある。芥は革命を言い訳にして'関係'から逃げ、何者かになる覚悟がない。
 ゴニョゴニョ言わずとも、こういうことだ。子どもをつくっておきながらフーテンを続け、にもかかわらず千人の群衆の面前では子どもをひけらかす。成り行き次第では暴力の渦になりかねない場所でだ。おれはああいう奴は嫌いだ。
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