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タルテュッフのarchのレビュー・感想・評価

タルテュッフ(1925年製作の映画)
4.2
1926年のドイツ表現主義の色濃い映画。特に劇中劇である「タルチュフ」における影と光の扱い方はまさにそれ。

金持ちの老人を騙し、遺産を狙う召使い家政婦。彼女は彼の実は孫を追い払い、遅効性の毒を飲ませ、着実に遺産を奪取する計画を進める。しかしそこに移動型の映画興行人が現れ、「タルチュフ」を上映するのだ。
その内容もまた、そういった富裕層のオルゴンという男にまとわりつく詐欺師の話であり、聖職者を偽り、金銭を狙うのだ。
聖職者というレッテルの危うさをさらけ出し、誰の傍にも「詐欺師」はいるのではないかと投げかける。それが入れ子構造を用いて老人を救うのだ。
映画興行人は実は孫であり、彼は画面のど真ん中で我々に向かって「詐欺師」を白昼のもとに晒す。
その行為は前半の第四の壁を壊した演出があってこそ、我々へのメッセージになる。

当時を思えば、驚くほど斬新な構造であり、そこに魅惑の表現主義的な映像がある。
ムルナウ好きにはたまらない1本。
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