MasaichiYaguchi

グッド・ワイフのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

グッド・ワイフ(2018年製作の映画)
3.6
グアダルーぺ・ロエザの小説を原案にアレハンドラ・マルケス・アベラ監督が、1982年の歴史的なメキシコの経済危機を背景に肩で風を切るような勢いのセレブ妻が凋落していく様を、当時の華やかで豪華なファッションや暮らしぶりを交えながらシニカルな視点で描いていく。
新型コロナウイルスの影響で世界恐慌以来の経済危機が訪れるとの話しも出ているこの頃、この映画が描かれたことは決して他人事とは思えない。
映画の冒頭、本作のポスターやチラシに掲載されている印象的なシーンが登場するのだが、この「我が世の春」という感じの主人公のセレブ妻ソフィアにヒタヒタと“崩壊”の影が忍び寄っていく。
それは彼女のステイタスを支えている夫フェルナンドの会社で起こったこと、それに伴って変わっていく彼の態度や振る舞い、彼女は内心は危惧しながらも“見なかったこと”にして、セレブ妻たちとのコミュニティでの活動、パーティーやテニスクラブに何事もなかったように参加し、振る舞っていく。
それはソフィアがコミュニティのファッションリーダーであり、コミュニティを牽引する“女王”だからという点にある。
だが、コミュニティ内のマウンティングによって得た“地位”を支えていたものが崩れ去ったら、いつまでもそんなことは続けられなくなる。
やがて決定的な事態によって今まで「見ざる聞かざる言わざる」ことが白日の下に晒され、彼女は夢から現実に引き摺り出される。
それでも夫に依存し、虚飾まみれの人間関係を築き、自立出来ずに助けがいる存在こそが「グッド・ワイフ」という考え方は変わらない。
映画のオープニングと対を成すラストでのソフィアの“落差”が強い印象を残します。