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プリズン・エスケープ 脱出への10の鍵のmegurosのレビュー・感想・評価

4.0
1970年代の南アフリカ。白人が専用ビーチでピニャコラーダを飲んでいる時、黒人の子供は路上でウサギのように警官に撃ち殺されていた。肌の色による人種隔離政策が取られ、日常的に非道が罷り通っていたそんな時代。“自由と平等のために全人種が戦うべき”というメッセージを発信し、反アパルトヘイト運動を展開していたANC(Africa National Congress=アフリカ民族会議)に参加していたティム・ジェンキン(ダニエル・ラドクリフ)は、政治犯として高警備のプレトリア刑務所に収監されてしまう。本作はそのプレトリアから、木鍵を駆使して脱出する様子を描いた実話に基づく話。原題はEscape from Pretoria.

※原題の方がカッコいい。Escape from LAとか、Escape from Alcatrazとか脱出ものの作法をしっかり押さえている。一方で邦題は...そもそも鍵は10個じゃないので、マーキュリー計画を描いた「ドリーム 私たちのアポロ計画」のような感じ...。

この映画で描かれる非道は現在のBLMの社会背景とも地続きであり、入管問題が露わになった日本にとっても決して無縁ではない。脱獄映画ではあるが、ファシズムやそれを涵養するシステム、もっと言えばSNS等で気炎を吐く日常のファシストが社会に作らんとする鉄の檻を、我々がいかに突破しうるのか、ということがテーマになっているようにも思う。

劇中「毎日のルーティンの中で突破口を見つけ、一度それを見つけたら最大限それを利用することを繰り返す。とにかく抵抗を諦めないことがファシストの倒し方」...だと語られるが、自分もワンショットでめげるのではなく、選挙のたびに、さらには日常において、抵抗をとにかく続けることこそが大事なのだと勇気づけられた。(しかし、とにかく心臓に悪い映画なので何度も見るのは精神的に苦しそう)

ハリーポッターとはもはや思えないダニエル・ラドクリフの顔つき、ナレーションもとても良かった。アパルトヘイトは92年に撤廃、94年にANCのリーダーだったマンデラが大統領に就任。ラストのタイトルカットもカッコ良かった。
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