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ミナリのt0moriのレビュー・感想・評価

ミナリ(2020年製作の映画)
4.0
先週、公開初週に観たのだけど、考えがまとまらず、時間が経ってしまった。

現代版(と言っても舞台はレーガン政権下だから40年ほど前の)『大草原の小さな家』。父親が頑固にその土地に根を下ろそうとするところなども、良く似ている。
しかし、ここで描かれる主人公たちは、『大草原の〜』では、ごく当たり前に差別的な扱いをされて来た人々だ。しかも、祖国は民主化運動の最中、光州事件など荒れた時代に、アメリカへと新たな生き場所を見つけに来た人々。
そんな彼らが、かつての入植開拓民と同じ様に、寂れた田舎に根を下ろそうとする姿は、アメリカが移民の国として発展して来た様の象徴の様だ。

ジェイコブとモニカ夫婦は最初から不穏な空気で、物語全体に不安な空気を漂わせ続ける。そこに加わるモニカの母スンジャの存在は、どこか浮世離れした遊び人的なムードを放つ人で、シリアスな夫婦の関係に別な風を吹き込む様だった。
そんなお婆ちゃんと最初は抵抗を示すものの、徐々に打ち解けて行くデヴィッドがかわいい。両親が腫れ物に触るように接していた彼に、「Strong boy」と評する祖母が優しい。

日曜日には十字架を背負って歩く、雇われ人のポール、度重なる教会の描写など、宗教的な意味がある様だったけど、読み取れず。

デヴィッドが良くなっていくのと対照的にお婆ちゃんに災難が続く。さらにそこから致命的な事件が起きるけれど、結果的にはそれが夫婦の危機を救い、ジェイコブの翻意を促す事になる。

振り返れば、お婆ちゃんが全てを救ってくれた様な形になっていて、この何処か歯車の合わなかった一家に、天使の様な存在となっていた。
彼女が植えた芹が、この土地に根付く一家の様を象徴していた。

と、ここまで書いたところで、町山智浩さんの映画ムダ話に本作が追加され、聞いてみた。主に本作に対する宗教的な観点からの解釈であった。
少し匂いは感じてはいたものの、キリスト教に対する理解があるかどうかで、アングルが全く変わり、違う映画の様だ。なるほど〜……。

前から感じていたけれど、やはり旧約聖書くらいは勉強しないとダメかな……もう少しその辺のリテラシーがないと、この手の映画を初見で楽しむのが難しい。

さらに今週観た『ノマドランド』が、全く違う映画の様で、この作品と鏡の様に呼応している気がした。この2作が同時期に製作されたのは、偶然じゃない様に思う。
そちらはまた整理して書きたい。
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