蛇らい

ミナリの蛇らいのレビュー・感想・評価

ミナリ(2020年製作の映画)
3.7
監督の幼い頃を描いた私小説的な側面もえるせいか、子どもたちの視線の先に見えている世界のように感じた。

親たちが口論しているシーンでは、手持ちのカメラワークが心情の揺れや、未熟さゆえに大人と対等に渡り合えないもどかしさを表現していたように思う。そこに投げられるのが言葉ではなく、紙飛行機であることの映画としての雄弁さに思わず感嘆してしまった。

大人たちを映し出すときの少し引いたな視点が子どもたち特有の感性と冷静を上手く表現し、それを生かした作劇になっている。また、おばあちゃんを大人とも子どもとも違う浮いた存在にすることにより、ラストのよるべのなさに拍車をかける。それまでの道のりをもう一度省みるように促す手腕は流石である。

心臓病により走ってはいけないという生来の枷を、監督自身が幼かった自分に移民2世であるという宿命として投影させる描写に涙せずにはいられない。たとえ心臓が止まろうと、あの日の自分が今の自分に間に合うように走り出す。監督が自らの人生を誇りに思っている事実に勇気を貰える。
蛇らい

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