ネコ一族

MINAMATAーミナマターのネコ一族のレビュー・感想・評価

MINAMATAーミナマター(2020年製作の映画)
4.5
水俣病の悲惨な現実を、写真で世界へ出してくれた、実際にいた戦争写真家、故ユージン・スミスさんと日米ハーフの通訳で知り合うアイリーンさんの史実を元にした映画。
アイリーンさんは後にユージンさんと結婚し離婚…するも、現在はユージンさんの水俣の写真の著作権を管理する団体を運営しているとか。
そして映画での冒頭、ジョニー・デップとわからなかった程、ユージン・スミスだった。

水俣病に関しての私の浅い知識を改めさせてもらった。胸が潰されそうに辛かった。
この映画は中・高生の授業でも見せる価値がある。
ほぼ史実に近い映画との事。でもチッソの社長がユージンにネガの買収を持ち掛けたり、作業場が放火される脚色は史実と違うとアイリーンさんが映画の試写でコメントしていたとか…こういう所!実際にいた方の映画化、ドラマ化で面白いだろうと話を創作する…ほんとに嫌いだ。
と、まあ私の怒りはおいといて、映画としても、音楽も坂本龍一で素晴らしく『入浴する智子と母』の撮影シーンと、エンドロールでの世界中の悲惨な環境汚染が流れ続ける映像では涙か止まらなかった。

映画中、ユージンが何度もフラッシュバックする戦争シーンの意味を、多くは語られなかったが、戦争写真家としての沖縄戦で砲弾の爆撃に巻き込まれ全身を負傷、左腕重傷、顔面の口蓋が砕けたために以後咀嚼が難しくなって固形物が噛みにくくなり、酒や牛乳や卵等の流動食で栄養をとり、アル中と後遺症に苦しみ、更にチッソ工場での暴力事件で負った傷から、視力低下と頭痛も加わり、最後は脳出血の発作で転倒し、死去…聞いているだけで辛い。
チッソはなんて酷い事をユージンさんにしたのだろう、同じ日本人として恥ずかしい。
チッソと日本政府は未だに十分な補償をしていない…と締めくくられる。
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