スズタカ

弱虫ペダルのスズタカのレビュー・感想・評価

弱虫ペダル(2020年製作の映画)
3.0
原作漫画が大好きで、アニメ版も大好きな、映画好きの立場からの感想として、駄作とまでは言わないが、1本の映画としての完成度が低く、また、弱虫ペダルの実写化としても、物足りない。

漫画やアニメを実写化する場合に限ったことではないけれど、脚本、演出、演技の方向性が全て揃っていないと、僕は観ていて気持ちの悪さを感じます。

その点、この映画は、演出の方向性と役者の演技のアプローチが全く噛み合っていない。

リアルとフィクションの、どちらにでも転がすことが出来るような脚本ですが、演出は極めて現実的な作劇で、脚本に監督自身が加わっていることで、元々、現実的な物語として描こうとしている事が、解ります。

それならば、当然、役者の演技も現実的であるべきでしょう?

しかしながら、この映画では、演出に合った現実的な人間として演じている人もいれば、アニメキャラクターの完全再現に挑んでいる人達もいる。

更には、どっち付かずで、その按配に迷っている人達もいるから、すごくモヤモヤした、おかしな映画になってしまっています。

これは、監督の責任でしょう。役者さん達は何も悪くない、各々が考えるベストを尽くしたのでしょう。
脚本を読んだだけでは、どちらとも取れる内容なんだから、各俳優さん達のアプローチにバラツキが出てしまうのは当然です。

撮影以前の、読み合わせやリハーサルの時に、監督が、自分の作ろうとしている、この映画のビジョンを伝え切れずに野放しにしたから、こんな事になったんだよ。

ただ、この映画が目指したリアルな方向性自体は、間違いじゃないと思う。

それは、連続実写ドラマの時のように、ロードバイクに乗っている事すら嘘に見える、現実にいるはずもないような外見の人達のコスプレ大会になった上に、VFXによるアニメ的な過剰演出によって、何にも信じられる物がないような物語にしてしまう事を避けて、ちゃんと地に着いた説得力を持たせたかったからだろう。
弱虫ペダルを本物にしたいという熱い思いには、好感を持ちました。

だけれど、単にリアルと称して何の工夫もせずに撮っただけでは、弱虫ペダルの魅力を伝えるには不充分でしょう?
実際、この映画を観た感想として、盛り上がるべきところで盛り上がることが出来ていない、地味さを感じました。

それも、監督の責任でしょう。VFXや、現実として有り得ない効果音など使わずとも、迫力を出すための撮り方なんていくらでもあるのに、その工夫をせずに、単に撮っているだけなんだよな。

また、表面上で感動的なシーンもいくつか用意されてはいるのですが、それが、全くと言って良い程、機能していない。
たくさんの練習シーンや、各キャクター達が共に過ごした濃密なシーンを積み上げをせずに、感動的なシーンだけを単体で並べられても、全く心は動かされないよ。

こんなのは、俺が大好きな、弱虫ペダルじゃない。
スズタカ

スズタカ