やまもとしょういち

あの頃。のやまもとしょういちのレビュー・感想・評価

あの頃。(2021年製作の映画)
2.9
いい役者、ユニークな物語を活かしきれておらず、脚本から音楽から要素要素が噛み合わないだけにとどまらず、むしろ打ち消しあってるかのような映画だった。

個人的に、大学の後輩として主人公の劔さんを知っているのもあって、この無軌道な青春物語にはグッとくるところがたくさんあったし、末期がんで死にゆくコツリンを「最悪の人間だった」と平然と語って棺桶のなかの死に顔を見て爆笑する人間関係は美しいとさえ思った(ホモソーシャルなノリは全然好きじゃなかったが)。なのだけれど、美術や演出は凝っていたり、ムードは仕上がっていても映像は物語をなぞっているだけにしか感じられず、筋書きが見えない無軌道な物語を引き立てるような編集もなかったように感じられた。

ひどい映画だとは思うけど、どうしてもこの物語を否定することはどうしてもできない。そう思わせるだけのものがある不思議な作品だった。