雷電五郎

パーム・スプリングスの雷電五郎のネタバレレビュー・内容・結末

パーム・スプリングス(2020年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

オンライン試写会で視聴致しました。

11月9日に閉じこめられたナイルズとサラ、そして、ロイのタイムリープを使ったコメディとラブのドラマです。

タイムリープと言うとSFを想像しますが、精密な設定や解説などはむしろヤボと言って差し支えないポップな作品で、最初から最後まで飽きさせないテンポでありながら、丁寧な間を置いてナイルズとサラの心境の変化もきちんと描いています。

また、コロナ禍で1人になりがちな今だからこそ、心がウキウキするような2人のはっちゃけぶりがとても痛快で、飛行機の墜落シーンは爆笑してしまいました。タイムリープしているからこそ、出来るはっちゃけですね(笑)

諦めることにも飽きる程の長い時間を11月9日に閉じこめられたまま過ごしていたナイルズは、タイムリープという非現実を分かち合える相手がロイしかいなかったために常に孤独でした。
同じ境遇に陥ったサラと過ごすのが楽しいのは、タイムリープを分かち合えたからでもあるのでしょう。
だからこそ、ナイルズはサラとずっと11月9日に留まりたいと望みましたが、サラは時間を前に進めることを選びます。

最後の11月9日の夜、「君と一緒にいれるなら生きていても死んでもいい」と言ったナイルズに対し、サラは「私は一人でも平気。でも、あんたがいれば退屈な毎日が少しは楽しくなる」と答えます。

一人でいることを選ぶのは本来孤独とは言いません。人の幸福には多種多様な形があり、好んで一人で生きようとも他者との繋がりが途切れてしまう訳ではないからです。
一人でいても大勢でいても、分かち合えるものがなければ人は誰しも孤独です。ですが、一人でいても大勢でいても、分かち合えるものがあれば孤独ではありません。
常にともにあることが必要なのではなく、一人で生きることができる自分が、自分自身の意思で他者と生きることを選ぶからこそ二人でいる意味がある。

サラのセリフはとても力強く優しく、地に足のついた愛の形を的確に表した言葉だと思いました。

最後にちゃんとロイにも脱出の方法を伝えているあたりが、二人だけのハッピーエンドでないことも素直に楽しめた理由でした。

セリフの言い回しもシャレていて最初から最後まで楽しめましたし、タイムリープに閉じこめられているのがナイルズ達だけでなく、太古の恐竜達までいたというのも面白かったです。色んな要素を詰めこみつつ、あくまでもナイルズとサラに焦点を当てており、物語の軸がブレないのでクッキーアソートのように贅沢でワクワクする映画でした。

オンライン試写会がなかったら知らずにいた作品でしたので、出会えてよかったです。
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