最近結婚したばかりの新妻で、大学講師を勤める夫に付いてベニントン大学へと訪れて彼の上司スタンリー・エドガー・ハイマンとその妻で作家のシャーリイ・ジャクスンと出会ったローズ。ヒステリックな妻にうんざりしたスタンリーに半ば押し付けられるようにシャーリイと関わる彼女が、徐々に感化されていく様を描いたドラマ映画です。
大戦後にデビューして数多くの作品で読者を集めて死後には彼女の名を冠した文学賞も創設されたシャーリイ・ジャクスンをモチーフにしたスーザン・スカーフ・メレルの小説を映画化した2020年公開の作品で、幼少期から音楽や文学に親しんできたジョセフィン・デッカーが演出する物語が評価されてサンダンスでは審査員賞を獲得しました。
伝記的要素はありつつもシャーリイのベストセラー『処刑人』を仄めかす空想性が特徴の物語で、それにデッカーが次作の『空はどこにでも』でも見せる淡い映像とせわしない音楽の演出で応えます。それ故の足し算の過剰さがレトリック遊びなお話の弱みを強調している所はありますが、流石のエリザベス・モスの存在感が牽引する一作です。