滝井椎野

事故物件 恐い間取りの滝井椎野のネタバレレビュー・内容・結末

事故物件 恐い間取り(2020年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

想像していたよりは怖かった。
主人公とヒロインの恋愛描写や、亀梨和也の意外とだらしないボディのサービスシーン、横水さんのキャラ……見所は数あれど、やはり語られるべきは最後の物件での除霊バトルだろう。
東京に来てからがこの映画の真骨頂であり、監督の撮りたかったものなのではないだろうか。
というのも、それまでの物件はきちんとホラー映画として作られていたが、なんの解決もしないまま次の物件へと進んでしまう為にどうにもインパクトが弱かった。
ところが、東京へと舞台を移してからは唐突な高田純次を始めとして映画の雰囲気が一変する。
尺が無いため数件分の悪霊を一気に詰め込んだかのような様は、以前観たアナベルの悪霊大集合を思い出した。アナベルの方は悪霊版アベンジャーズともいうべき華があったが、こちらは島国日本のボロアパート、どうしてもランクが落ちてしまう感は否めない……だがそれで良い。あのしみったれた雰囲気が堪らない。特に冷蔵庫の霊はあれで良いのだろうか、いや良いのだろう。それらが御守りひとつで蹴散らされるのも実に小気味が良い。そして何といっても最後の死神? とのバトルである。ハリー・ポッターのヴォルデモートのような外見の悪霊を相手に、元相方の持ってきたアイテムで立ち向かう。これは熱い。特にあの線香……松明かと見紛うほどに大量に束ねられたあの線香は今後の対悪霊アイテムの主流になるのではないだろうか。そこから繰り出される、およそホラー映画とは思えない火花のエフェクトには思わず唸ってしまった。
ラストは今後の戦いを匂わせる「俺たちの戦いはこれからだ!」エンドで、今後に期待せざるを得ない。
この作品の見事なところは、現実から虚構への見事な切り替えだろう。途中まではきちんと原作を元として作られており、実際に芸人のタニシ氏が体験したというものを描いている。しかしラストバトルは違う。あそこで現実が虚構へと切り替わることにより、「事故物件住みます芸人タニシ」は実在する人物からホラー映画のキャラクターへと昇華した。
今後はもしかしたら、貞子や伽椰子等のキャラクターと共演することも有り得るかもしれない。これは実に楽しみである。
滝井椎野

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