MasaichiYaguchi

白い暴動のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

白い暴動(2019年製作の映画)
3.7
この1970年代のイギリスを舞台に人種差別反対を唱えた「ロック・アゲインスト・レイシズム(RAR)」のドキュメンタリーを観ると、改めて「歴史は繰り返す」ものだと思ってしまう。
その頃ハイティーンだった私は、イギリス社会が荒れていたことは何となく分かっていたが、それを背景に生み出されたパンク・ロック、本作にも登場するザ・クラッシュやセックス・ピストルズの音楽に惹かれて、自室でガンガン掛けていた。
それにしても当時、市民が抱いていた不平不満が第二次世界大戦後に増加した移民たちへ転嫁される“構造”は、一時期激しかった韓国の反日運動や、現在の新型コロナウイルス感染拡大による中国をはじめとしたアジア系への深刻な差別と類を同じくすると思う。
排外主義や保守的傾向が強くなる世相に対し、「それはおかしい!」「NO!」を唱えた若者たちの中の数人で発足されたロック・アゲインスト・レイシズム、略称RARは、自主出版の雑誌や音楽を武器にプロパガンダを展開する。
主義主張を唱えた雑誌やイベントというと機関誌や集会を思い浮かべてしまうが、RARがユニークというか戦術的に優れているのは、雑誌のビジュアルがお洒落で、若者受けしそうなタウン誌のようであること、集会ではなく、音楽フェスの楽曲を通して多くの若者たちにメッセージを伝えているところ。
その楽曲の中でもやはり、タイトルにもなっているザ・クラッシュの「白い暴動」は、当時の自分自身を思い出しながら胸に熱いものを感じてしまいます。