ふみ

MOTHER マザーのふみのレビュー・感想・評価

MOTHER マザー(2020年製作の映画)
4.8
胸糞とか、クソ人間とかそういう言葉で片付けていい話じゃない。キムジヨンを見た時と少し似たやりきれない気持ち。
結婚と出産は若いうち(考えが浅いうち)にした方が良いと言うが、間違いない。考えるほどに知るほどに、踏み出せなくなる。

子供にとって、母親の持つ力はあまりに大きすぎる。父親とは違う、母親は支配にも近い力を持つ。一緒に過ごす時間なのか、お腹を痛めて産んだ子だからなのか。
女性は、母親になった瞬間、一人の女性ではなく「母親」として生きることを強要される。
美容、自分の趣味、仕事、それを保ちながら子育てができるのはお金と環境に恵まれた一部の人だけ。「〇〇ちゃんの母」として残りの一生を生きるのに、子供は大きくなれば母を疎ましく思い巣立っていく。
子育てとは、自己犠牲だ。お金も人生も捧げて、自分を犠牲にして人を育てるのだ。
毒親はなぜ生まれるんだろうと思っていたけれど、大人になった今ならわかる。良い母と毒親は紙一重だ。

この映画の長澤まさみは、一般的に見れば「クソ人間」かもしれない。
本当にそうだろうか?
彼女をここまで追い込んだのは何?父親は?昔の恋人は?彼女の両親は?(映画では殺される可哀想な親でしかないが、真相は描かれていない=こちらに想像の余地がある)
彼女がどんな人生を生き、何が好きで、どんな恋をして、どうしてこうなったんだろう。ひょっとして、彼女は母親にならなければ「ちょっと嫌な女」で終わったかもしれないのだ。

先日もTwitterで見かけた「虐待は異常者がすると思っていたが、母になれば誰でもその気持ちが分かる。虐待は近い場所にある」というツイート。
虐待やDVの加害者は、被害者であるのかもしれない。
救いようのない世界、でもその中に何かの救いを求めて人は人を愛し、子供を産むのかもしれない。

子供を産むこと、育てること、
考えれば考えるほど難しいし
考えれば考えるほど上手くいかなくなるのかもしれない。

こんな私自身は、アダルトチルドレン、まだ、子供なのだろう。
だけど、だからこそ、ただ一元的に何かを否定せずに、弱い人に寄り添える人でありたい。
ふみ

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