骨折り損

MOTHER マザーの骨折り損のレビュー・感想・評価

MOTHER マザー(2020年製作の映画)
3.7
奥平大兼。怪物。

兎にも角にもこの新人に夢中になってしまった。

作品的には長澤まさみが演技派としての一面を見せるっていう触れ込みがあってこそ成立した企画なのだろうが、ごめん、長澤まさみを完全にこの新人は食っていたと思った。

自然過ぎて、まわりの俳優が浮くくらいスッと耳に馴染んでくる発声と表情。大袈裟俳優が持て囃される日本映画に、頼むから染まらないで欲しいと願う。

役者ばかりに目がいってしまったが、肝心の物語も面白かったっちゃ面白かったけど、予想を越える事はなかった。しんどい現実を見る映画なんだろうなと思ったらそのまま期待通りではあった。

他作品と比べるのは申し訳ないとは思いつつ、どうしても『誰も知らない』がチラついてしまった。賞を狙っているんだろうなと、打算的な良からぬ事を節々で感じてしまって少し集中しきれない感じがあった。

そもそもタイトルがあまり良くない気もする。MOTHERと名がついていると、どうしても長澤まさみ目線を意識してしまう。共感できないか頑張ってしまう。でもこの話、完全に息子の話であり、彼に感情移入しちゃうので、母親の描き方に疑問が残ってしまう。

どうしようもない人でも、人を好きになるのは理性じゃないというのはよく分かった。ただ、なんだろうか、もう少し息子の葛藤が表面化するのを常に期待してしまったのが物足りない原因かもしれない。

息子の最後の台詞は、凄く胸に突き刺さった。次この人が映画出る時は必ず見ます。
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