MorinoAndo

MOTHER マザーのMorinoAndoのネタバレレビュー・内容・結末

MOTHER マザー(2020年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

前から見たかった映画でやっと見れたと思っていたら、自分の体力ごとこの映画に持っていかれそうでした。それぐらいの映像表現、画力、ストーリー性で休憩する暇もありませんでした。
少しも非現実的な関係性や表現はなく、一貫してリアルで「複雑な家庭」を残り余すことなく表出し切っている映画です。
想像しうる最悪の展開が連続して起こりました。
自分がまだ親ではなく子供なので自然と周平視点でこの映画を見ていましたが、お母さんが、他の男に遊ばれている姿、怒鳴られている姿、挙げ句の果てに暴力を振るわれている姿を、全てその場にいて肉眼で受け止めている周平の気持ちを思うと本当に胸が痛くなりました。その周平を横目に快楽に溺れ、行動力のないままに他人に助けを求め、流れるように底辺に落ちていく母。
このどうしようもない生活感がまたリアルに突き刺さったように思います。

その後、周平と血の繋がっていない別の男との間に生まれた妹の面倒を、まともに母からお世話を受けていない周平が母に代わって遊んでやったり本の読み聞かせをしたりしていた時、こんな家庭で育ったのにも関わらず本当に優しい子なんだと感じました。

最後の最後で、母と周平が交わす、「ここまで来てやめるとかないよ」「時間は1時間ぐらい」「長いよ」の会話に、一家心中を計画しているのかと勝手な予想をしていた最中、祖母の家に向かった瞬間から目を瞑りたくなる画が続き、最悪の展開を迎えます。

事後、刑期を受け周平が面談中に話した事から感じた事は、周平にどんなバックグラウンドがあっても母と自分とを繋ぐたったひとつの気持ちであり、題名通り、「母」とは「子」からしていかなるものなのかを考えさせられる内容でした。

最初から最高にしんどかったです。本当に気分は良くない映画ですが、セリフのない時間に汲み取れる感情や、息遣いや雰囲気で訴えてくる表現力に終始圧倒されました。見たかった映画を見れて良かったです。
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