【見据えた先へ】
ノルウェーの首都オスロで起きた
“2枚の絵画盗難事件"
この事件に興味を持った監督は画家と連絡をとって撮影を始めた。短編ドキュメンタリーを撮るつもりが、その実、3年以上も密着する事になる。
監督インタビュー抜粋
「絵画泥棒にはいつも興味が掻き立てられる。犯罪と芸術という正反対の性質が混在すると感じるからだろう。絵画泥棒はどんな人間なのだろうか。なぜその絵画を選び盗んだのか。お金のためなのか、それとも芸術への純粋な愛ゆえか」
人物を"ありのまま"に映す、というのは本当に難しい。自分が数年間カメラを向けられ密着される、と思えばよくわかるだろう。しかし、時には「撮られる」「撮られている」という意識、その影響も相まって被写体自身ですら思いもよらぬ物語が展開される事がある。今作はその稀なるドキュメンタリー作品の一つ。
監督:ベンジャミン・リー
あらすじ
ギャラリーで代表作の絵を盗まれた女流画家。犯人は見つかるが窃盗時の事について覚えていないと話す。そんな彼に画家は意外な依頼を持ち掛け、“画家と泥棒"の思いもよらない関係が始まっていく。
「貴方を描かせてほしい」
なぜ彼を描きたいと思ったのか。彼の何が見えていたのか。その危うさ全開ながらも魅力的な泥棒に視聴者側も少しずつ惹かれていく。
画家は泥棒を、“見て"
泥棒は画家を、"見る"
描きながら、泥棒の話を聞く、絵に転換される。聞く。転換される。聞く…描く…。そして、その仕上がった絵を初めて見た時の
“泥棒の表情"
もうね、なんとも形容し難い彼の反応。危うく泣きそうになった。
自分の中で何かが起きた時の顔、自分が想像していなかったモノに出会った時の顔、人が感極まった時にだけ表れる顔、身体中から溢れるその言い知れぬ、感情。
商業的な劇映画だったら間違いなくラストに持ってくるその場面は、今作での序盤。そして、その先に描かれるものは絵が齎す不思議な関係性の物語。
ジャン=フランソワ・ミレーの言葉
「本当にものを観るというのは目が開いているだけでは足りない。心で感じているかどうかである。」
「絵」と聞くと思い出す事がある
昔、3DSで「いきものづくり クリエイトーイ」というゲームがあった。「クニャペ」と呼ばれる生き物をお絵描き感覚で作り、そのキャラクターを動かすアクションゲームだ。
私が時間をかけた自信作
その「絵」が動くのを先に見た人が鼻水噴き出しながらのたうち回っていた。とても苦しそうだった。
私も動かしてみた
顔から出る凡ゆる体液を撒き散らしながら転げ回り本当に死ぬかと思った。
心で感じすぎたのだろう