DJあおやま

僕が跳びはねる理由のDJあおやまのレビュー・感想・評価

僕が跳びはねる理由(2020年製作の映画)
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初めて原作者・東田直樹について知ったのは大学での講義のこと。その時、衝撃を受けたのを今でも覚えている。僕の従兄弟も自閉症で、最近ではすっかり疎遠になってしまったが、小さい頃は交流があった。当時、僕は幼さゆえ自閉症についての認識が足りておらず、おそらく知的障害やなにかと混同していた。僕にとって従兄弟は、絵を描いたりおもちゃで遊んだりしていると邪魔をしてくる存在として、どこか疎ましく思っていた。だからこそ、大きな衝撃を受けるとともに自分の認識不足を恥じた。この作品でも説明のあるとおり、自閉症者は一概に知能が低いのではなく、物事の捉え方や視野の広がり方が“普通”とは異なる。ただ、それは自閉症者にとっての“普通”だからこそ、自閉症者がどのような世界を感じているのか解明することは容易ではない。だからこそ、側から表層的に見れば知的障害や他の発達障害と混同するのは無理もないのかもしれない。そんな勘違いや偏見に晒されながらも、我々の“普通”を想像し理解した上で、その差分をもって自閉症を解き明かすという雲を掴むようなことを成し遂げた東田直樹の功績は大きいと思う。
ただ、その功績を知った上で観る、この作品自体には大きな衝撃はなかった。“体感ロードショー”というキャッチコピーが打たれていたが、この作品を通じた体験によって、自閉症について理解を深められた気はしなかった。ただ、さまざまな国に自閉症者は当然ながらいて、それぞれ葛藤している姿には思うものがあった。国によってはいまだに悪魔憑きだと忌み嫌われ、ひどい扱いを受けているだなんて悲しい話だ。そういう偏見が生まれぬよう、もっと多くの人に理解をしてほしいと月並みながら思う。自分もしっかり原作を読んでみようと思った。
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