Jun潤

ナイトメア・アリーのJun潤のレビュー・感想・評価

ナイトメア・アリー(2021年製作の映画)
3.7
2022.03.29

『パシフィック・リム』ギレルモ・デル・トロ監督作品。
ウィリアム・リンゼイ・グレシャムの小説『ナイトメア・アリー 悪夢小路』を原作に映像化。

とあるカーニバルに流れ着いた男・スタン。
彼はそこの見世物小屋で、“獣人”という獣のような人間を目にする。
日雇い労働としてそのカーニバルで働き始めたスタンは、そこでジニーとピートという占い師と読心術師、モリーという手品師と交流を重ねる。
スタンは、カーニバルの支配人・クレムから“獣人”の正体もまた、行き場のない浮浪者を手懐けただけの仕込みであることを知る。
スタンはピートに師事し、モリーの劇をより盛り上げるためのアドバイスを送り、モリーをより豪華なステージへ連れ出す夢を語る。
やがて、捜査の手が及んだカーニバルを救ったことで自身の技術に自信を持ったスタンは、モリーと共にカーニバルを飛び出す。
2年後、一流ナイトクラブでモリーと共にショーをするスタンは、リリスという心理学者と出会う。
彼女との出会いは、成功への足掛かりか、破滅への第一歩かー。

いやー、これは騙されました!
とてもいい意味での予告詐欺作品。
てっきり人外のものとの交流を軸にしているかと思うじゃないですかー。

ぶっちゃけオチについては序盤にクレムの口から「ナイトメア・アリー(悪夢小路)」の名が出た時点で予想はついていましたが、そのオチに向かってスタンがどのような道を辿っていくのか、どこまでフラストレーションを溜めて、どうカタルシスを発揮してくれるのかに絞って観進めることができました。
結果は期待通り、いえ、期待以上でした。

序盤のシーンを発端としたスタンという人間の異常性、自身の技術を過信し、金に目が眩んで破滅へと向かって道程を進んでいく様。
本人がなまじ希望を持ち続けているものだから、ノワール小説を原作にしているに相応しく、暗い画面の中でスタンがどんどん闇に染まっていく過程も楽しめました。

『スパイダーマン』シリーズでのグリーン・ゴブリン役の印象が強烈なウィレム・デフォーの表情も印象的でしたが、今作では特に女性陣の演技が印象に残りました。
リリスを演じたケイト・ブランシェット、モリーを演じたルーニー・マーラ、ジーナを演じたトニ・コレット。
それぞれに儚げに見える弱さ、女性らしい強かさ、男に支配されず、惑わし操る魅力があふれていました。
まさにノワール小説の「ファム・ファタール」のような魔性が具現化されたようなキャラクターたちでした。

ショービジネスの枠を超え、金のために人の心を騙すことも厭わなくなったスタンの行き着く先は、かつて自分が目の当たりにした“獣人”の姿。
彼は必然的に、または偶然的に、「ナイトメア・アリー(悪夢小路)」へと迷い込み、抜け出せなくなってしまっていた…。
Jun潤

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