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ナイトメア・アリーのエスのレビュー・感想・評価

ナイトメア・アリー(2021年製作の映画)
4.9
吊るされた男の逆位置の意味は、”無駄な努力”だそうで。

運命、カルマ、理由、相対。
皮肉にも彼は導かれるようにして” 絶対 にならない”と決めていた場所に還ってきてしまったような。あんな猪突猛進に騙して汗水垂らして手を汚して必死に生きてきたのに、自分が追い求めていた先は、答えはここだったのか、なんだそうか、そっか、そうなんだな、と。きっとこれも紛れもなく自分達がいるこの世の恐ろしい部分なんだと思う。

分かっていたけど気持ち悪くて、残酷で、とても満たされるような終わり方でした。良くも悪くも夢見心地な気分です。

”I was born for it”......
この言葉がどれほど虚しくて美しいのか…………
最後のスタンが本当に頭から離れず、鑑賞直後からエンドクレジットの”Stardust”しか聴けないくらいにのめり込んでしまっている。個人的にはジョーカーのホアキンを思い出したくらい衝撃だった。ブラッドリークーパーはこれがハッピーエンドだっていってるのも怖くて最高じゃないすか。

出てくる登場人物が全員”人間”で、悪でも善でもない、ただこうなるように生きてきたというか。うわあ、なんて言ったらいいんだろうな。サーカスも都会もみんなそう。みんな汚くて優しくて信用出来ない。

この作品の考察を読み漁るのもすごく楽しくって、エノクがエズラグリンドルの子っていうのが一番読んだときに鳥肌が立った。

ケイトブランシェットはどこから?思っていたら、なんとまぁ、最高に麗しく最悪でやっぱり最高だったな。

ただ自分はルーニーマーラがめちゃくちゃ大好きなので何としても幸せであってほしいところです。

めちゃくちゃ良かった。ずっと考えてしまう。原作もデルトロ監督の他作品ももっと知ろうと思ったし、パンフレットに載っていた製作や美術に関してのお話も、自分にとっては未知な世界で溢れていた。とにかくまたみたい。あわよくば夢に出てきてほしいな。もしかしたら今年一番好きな作品かもしれない。
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