ちろる

ナイトメア・アリーのちろるのレビュー・感想・評価

ナイトメア・アリー(2021年製作の映画)
3.8
野心に目が眩み、人を騙しながら辿り着いたのは悪夢の小路。

弱みを見せるな
自分を見失いたくなければ

酒に飲まれるな
人間でいたいのならば
野心に目覚めたスタンが迷い込んだのは、想像もつかない悪夢の小路・・・

1946年に出版された小説「ナイトメア・アリー 悪夢小路」を原作に、ショービズ世界の闇をギレルモ・デル・トロが映像化した本作は、 今年のアカデミー賞作品賞に4部門ノミネートされていた。

ギレルモ・デル・トロ作品には珍しくクリーチャーのような存在が登場しないが、見せ物小屋、小人症の男、獸人使い、タロット、降霊術…カルトな世界の住民が織りなすダークでグロテスクな世界は、彼でしか作り出せない。
クリーチャー目には見えないがストーリーの中では確実に「異形の存在」が登場するのが面白い。

野心を抱き富を追い求め、やがて男は奇術師となり慢心に溺れ、破滅する主人公が悪夢の小路に入るのを鑑賞者が追体験するかのような作品である。

主人公を破滅に引き寄せるのはエディプス・コンプレックスによる彼の原罪。
そしてその原罪はまさにこの悪夢の小路への入り口。
物語のテーマは人間の条件とはなんなのかということであるが、決して小難しい話ではなく、後半に行くほどスリリングな展開にハラハラさせられる。
ルーニー・マーラもとても好きだが、今回は主人公を操る精神科医を演じたケイトブランシェットの存在感がなかなか面白かった。
美術と映像、俳優どれもバランスが良く、デル・トロ監督でなければこんな怪しく美しく仕上がらなかっただろう。
ダークなエンドでこの終わり方も本作にとってはベストな終わり方で、上映時間150分も長い感じはなく楽しめた。
上流階級から一気に落ちぶれていき、ゾッとする最期を迎えるスタンを見ながら
「自分はスタンになっていないだろうか?」と問いかける人間ホラーとなっている。
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