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マーベルズのnetfilmsのレビュー・感想・評価

マーベルズ(2023年製作の映画)
3.8
  『ワンダヴィジョン』から駆け足で雪崩れ込んだMCUのフェイズ4も殆ど核心部分を見せぬまま、静かにフェイズ5に移行したわけだが、フェイズ3までとそれ以降との決定的な違いとして、劇場版だけではなくドラマ版の流入が挙げられる。商魂逞しい親会社Disney+のメディアMIXは新たタームに突入し、スピンオフのようなドラマ・シリーズがまず先にあり、そこから横断的に劇場版にメイン・キャラクターが流入するというのが新たなデフォルトとして確立しつつある。つまり今作はフェイズ3の『キャプテン・マーベル』の続編でありながら、2022年の6月に配信がスタートした6話構成の『ミズ・マーベル』を観ていない人にはさっぱりわけのわからない物語になっているので注意が必要だ。今作を観る前にドラマ版『ミズ・マーベル』の予習は必須で、もっと言えばモニカ・ランボー(テヨナ・パリス)のエピソードの細部は『ワンダヴィジョン』を、そしてニック・フュ―リー(サミュエル・L・ジャクソン)の更に細かなエピソードが知りたければ『シークレット・インベージョン』を予習しながら、頭の中で組み立てるしかない。この親会社Disney+によるMCUの囲い込み製作が吉と出るか凶と出るかは賛否両論で、全てが劇場版を観れば完結して行くフェイズ3までの流れが好きだった人にははっきりと不評なのだが、ユニバース化したMCUの横断的な物語に惹かれる人々にとっては、スピンオフから劇場版に雪崩れ込む流れすら熱狂の中で繰り広げられる。

 今作はわかり易く言えばアベンジャーズ最強の女戦士キャプテン・マーベル(ブリー・ラーソン)の成長物語であり、個人主義に近い孤独を愛したキャプテン・マーベルことキャロルの価値観が初めて危機に晒される物語なのである。いきなり宇宙ステーションS.A.B.E.R.と通信を取るキャロルとニック・フュ―リーの再会に熱いものがこみ上げながら、ジャンプ・ポイント=ヒューマン・エラーへと雪崩れ込む前半部分のミステリーの運びは申し分なく、時空がユニバース化したフェイズ4以降の例に倣い、キャプテン・マーベル、義理の娘のようなモニカ・ランボーと、キャプテン・マーベルにひたすら憧れるミズ・マーベル(イマン・ヴェラーニ)とのシスターフッド的な連帯こそがニア・ダコスタの意図だとはわかるのだが、光が発する力を三者三様で織り成す今作のアクション場面の複雑さを表現する様なアクション・シークエンスは極めてトリッキーに映る。ドラマ版を観ればわかるように、ミズ・マーベルことカマラの能力には憧れの人間に変身する能力があり、翻ってここではキャプテン・マーベルの絶対的な力を削ぐような形で、彼女と彼女をメンターと慕う2人とのシスターフッド的なソープ・オペラが演じられて行く。ニア・ダコスタの画面設計はSF的には本線からはやや逸脱する形には見えるものの、キャプテン・マーベルのパートナーにいきなり名乗りを上げたパク・ソジュンのミュージカル演出と、猫ちゃんたちの馬鹿馬鹿しさがある意味最年少監督となるニア・ダコスタの妙味となる。その一方でキャプテン・マーベルを演じたブリー・ラーソンの演技の低調さは予想外で今後、キャプテン・マーベルとミズ・マーベルのコンビネーションの成長が課題である。
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