20052010

さよなら、私のロンリーの20052010のレビュー・感想・評価

さよなら、私のロンリー(2020年製作の映画)
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「ふつうでない」両親と密な関係で育ってきた子の自立を描いているのは『Coda あいのうた』(2021)や『旅立ちの時』(1988)と共通するが、詐欺やこそ泥を生業とする一家の「ふつうでなさ」と子への接し方はだいぶ違う。娘オールドドリオはいつも分け前の1/3を受け取るなど「大人」として扱われてきたが、「子ども」として親に愛されることを求めて苦しんでいる。
そして、初めてバースデープレゼントと「おやすみ。いい夢を」という親らしい言葉をかけてもらって眠りについた翌朝のどんでん返し。完全に吹っ切れて自立する、未練のないハッピーエンドだ。
表情に乏しく26歳にしては幼いオールドドリオだが、変な声をはじめ惹きつけるものがあるし、映像と音もユニークで面白い。「コメディ」かどうかはともかく、深刻さのないスタイリッシュな作品で、見返すと新たな発見がありそうだ。

原題Kajillionaireは「あり得ないほどの金持ち」といった意味だが、これはオールドドリオという主人公の名前はくじで巨万の富を得たホームレスから取ったとされていることに関係すると思われる。またこれと無関係な邦題は、作中で繰り返しイントロが流れ最後に歌が出てくる「ミスター・ロンリー」(ボビー・ヴィントン/1964)からだろう。
2024.5.6
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