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情婦のRenのレビュー・感想・評価

情婦(1957年製作の映画)
4.5
原作はアガサ・クリスティの『検察側の証人』。法廷もの、サスペンス、どんでん返し映画のツボを押さえた名匠ビリー・ワイルダーの手腕が冴え渡る。

所謂どんでん返し映画を色々観てきたので、昔の映画だし騙されんぞと思ってかかったのだけど見事にやられた。見破れなかったし、騙し方が美しい。
法廷シーンばかりになると画面に動きがなくなって退屈しそうなところだが、そのぶん主人公の弁護士のキャラが濃いめなので全然問題無し。基本的に裁判にはヤバい人がいないと面白くないので。

ラスト7分、数十秒毎に訪れるどんでん返しの畳み掛けは興奮ものなので一見の価値あり。ここまで大胆にできるかと思えるほどのミスリードにも全く気付けなかった自分が悔しい....。片眼鏡も、なるほど、といった感じ。
ただ邦題の『情婦』は少し微妙な気がしてしまった。『検察側の証人』のほうが映画の重要なポイントに簡潔に切り込めている気がして良かったとは思う。

ビリー・ワイルダー監督の手掛けた映画が総じて好き。彼の作品にはマスターピースとして扱われるものが非常に多いですが、歴史的に価値や影響力がある、という部分を差し引いてもとにかく面白く観られるからというのが大きな理由。新作を観るくらいの気軽さで楽しめるのが彼の作品の偉大なところであるように思う。
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