Kenji

ファーザーのKenjiのネタバレレビュー・内容・結末

ファーザー(2020年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ロンドンに住んでいる父のアンソニーの元に娘のアンが訪れる。
父アンソニーは、81歳で認知症を患っていましたが介護士の人を帰らせてしまい、「誰の助けも必要としない。」と強情な態度を崩しませんでした。
そんな中アンは、「結婚するからパリに引っ越すことにする。」と言い寂しく苛立ちをみせるアンソニーに「週末には、会いに行く。」と言って安心させました。
そしてある日紅茶を飲もうとしたアンソニーは、ある物音を聞きアンかと見に行くとそこにはソファーでくつろぐ男性の姿が…。

今作は、認知症を患った父親を2021年アカデミー賞にて主演男優賞授賞したアンソニー・ホプキンスが演じました。
最初自分も故チャドウィック・ボーズマンかと思っていましたが、まさかの授賞に驚いた一人です。

認知症になった父アンソニーの視点をみせ、認知症の追体験、疑似体験をしていく様な演出もホラーな所があり不安に感じさせました。

・住んでいるのは、娘夫婦の家。
・パリに移住をしない。
・見た目が違う二人目のアン。
・買ったチキンをキッチンに持っていった夫のポールがいない。
・5年前に離婚している。
・着替えを持っていった次女にそっくりの介護士ローラが脈略無く居なくなってる。
・娘アンの問いかけが、さっきと同じ。
・施設に入れるように進める男とアンとの口論の場面が、繰り返されている。
・所々変わっている家具の位置
等など観ていく内に不可解な点が続いて行き、観る側も混乱して行く構成でした。

そして、娘のアンの視点も描かれカップを落とす場面や父親の首を絞める妄想も入っているように認識出来なくなってきている父への介護疲れや辛さ、苦しさ表している場面がありました。

最後に、アンソニーが見た夢に次女そっくりの介護士ローラが病院で横たわっている所で目を覚まします。
またローラに会えると、嬉しく思っていましたが実際に違う人…。
場面が変わって、ある施設の一室でアンとアンソニーが面会しておりそばにはキャサリンと言う介護士の人がいるシーン。
アンは、「また見舞いにくるから。」と言って去っていきました。

この前のシーンで施設のカラーリングの水色が、増えてきている所や施設の一室とアンソニーの自宅の間取が酷似している所でゾッとしました。

次女の悲劇的な死や家のこと、施設の人の顔と置き換わって欠如して交錯する記憶、さらに自分の名前すら忘れてしまったアンソニーは、母親に会いたいとキャサリンに泣き崩れるラストで幕を閉じました。

誰もがなるかもしれない“認知症”の恐ろしさや親族の悲しさを映した作品で胸に突き刺さりました。
どんどんと壊れていくアンソニーを演じた、アンソニー・ホプキンスの演技の凄さをこの作品でヒシヒシと感じました。
Kenji

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