ノラネコの呑んで観るシネマ

チィファの手紙のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

チィファの手紙(2018年製作の映画)
4.6
岩井俊二が「ラストレター」の前に、同じ物語を中国で撮った作品。
だから厳密にはこちらがオリジナルで、「ラストレター」がリメイク。
過去パートが高校生から中学生になっていたり、松たか子の息子が姉の子になっていたり、結構違いはあるのだが、基本的には同じ話。
同一監督が複数の国で自作をリメイクする例は多々あるが、先に外国で作るのは珍しいのではないか。
もちろん中国ならではのローカライズもされているのだが、元から文化的に近いし作家性が高いので、トーンは非常に似通っている。
秦昊はどことなく福山雅治に似てるし。
しかし二本並べて観ると、こちらが最初にあって日本版のプロットが改良されているのはよく分かる。
取捨選択の結果、要素が集約されて主人公男性の葛藤によりフォーカスされているのだ。
もっとも、初恋の記憶を巡るメロウでちょっと痛い物語は、どちらも十分味わい深い。
ところで、高校が中学になったことで、卒業からの時間が30年と伸びてる。
中国の1988年から2018年までの変化は、日本の25年間とは比べものにならないはずだが、時代性へのこだわりはあまり感じない。
この辺は、もし中国人監督が撮ったら違ったのではないかな。
中国の過去と今を描く、日中合作のアニメーション映画「詩季織々」の時も、日本人監督のエピソードでは過去への郷愁がほとんど描かれなかった反面、中国人監督のエピソードでは時代のギャップがこれでもかと強調されていた。
その社会の変化を肌で感じてる人の方が描けるのだろう。
ブログ記事:
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