YukiSano

佐々木、イン、マイマインのYukiSanoのレビュー・感想・評価

佐々木、イン、マイマイン(2020年製作の映画)
3.9
「誰もが、誰かの青春だ。」
というキャッチが胸に刺さる。

青春時代に共に過ごした旧友を思い出すことから、現在の自分を炙り出す物語。

佐々木は誰の記憶にも心当たりのある変な存在感の同級生であり、気の毒な家庭環境の人。お調子者なのは心の闇を忘れるために懸命に演じていた仮面かもしれない。大人になったら気付く真理と、そんな人を見て見ぬふりしてきた罪悪感を観客から引き出す。

皆が忘れられないけど、忘れたふりした感情を思い出させることによって、全ての人にお前の青春は何だったのかを問い正してくる。自分もまた誰かの青春の一部だったのだと、鏡のように写し出され自覚を余儀なくされた。佐々木は旧友であり、自分自身でさえもある。そこが恐ろしくもあり、素晴らしい。

徹夜カラオケの朝焼け、友達の家でのコタツ寝。あの頃の匂いが掘り起こされる。

桐島が部活やめるのなら、佐々木はコタツで寝る。誰にでもある思い出の「象徴」である佐々木。桐島とは対象的でありながら、共通性を感じる。

ラスト、とても映画的な手法で佐々木の想い出は復活する。

それは、青春は無駄ではなかったと信じるために巻き起こった切ない佐々木コール。想い出は息を吹き返す。
YukiSano

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