藍住

悲しみが乾くまでの藍住のネタバレレビュー・内容・結末

悲しみが乾くまで(2008年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

ある日最愛の夫、ブライアンを亡くして突然未亡人になってしまったオードリーと、ブライアンの親友だった薬物中毒者のジェリーが葬式で出逢う所から物語が始まる。
こんなに上手くできたストーリーを見て、違和感を感じないのか不安に思ったが、杞憂に終わった。
ブライアンは根っからの良い人で、薬物中毒者のジェリーさえも捨てない。
道端で暴行されている女性がいたら、躊躇なく手を差し伸べる。
そういう人だった。
だから彼の周りには、同じように良い人が集まってくるんだな、と自然に思えた。

大事な人を亡くしたオードリーとジェリーがどうやって立ち直るのか?
悲しさと向き合い、受け入れるには膨大な時間がかかる。
私はオードリーを身勝手な女だなんて思わない。
悲しみに暮れて、薬物中毒であるジェリーに貴方が死ねば良かったのにって言ってしまうくらいには正常な判断ができない。
ジェリーは薬物をやっているから、正常ではない。
そんな二人がお互いが支えあいながら、時に衝突し、悲しみを共有しながら手探りで道を探す姿に泣けてしまった。
やっと二人が悲しみを受け入れられたあの瞬間は一生忘れられない。

ジェリーのラストの独白は、薬物だけでなく、オードリーやその家族のことを指していると思う。
オードリーがブライアンをこれからも愛して生きていくことを知っているし、ジェリーも自分の手でオードリー達の平穏な暮らしを壊したくないと、あの一時的な同居生活で思ったんじゃないのかな。
多分、彼はまた長い時間をかけて、オードリーに対する自分の気持ちと向き合っていくんだろうな。
今にも泣き出しそうな顔をして、誓うジェリーに泣いた。

凄く凄く良い映画だった。
ラストに差し込む希望の光と、心をかきむしられるような寂しさと痛みを、忘れられないよ。
藍住

藍住