第33回東京国際映画祭
TOKYOプレミア2020部門
ワールド・プレミア上映にて鑑賞
大きさは様々なれどトラウマを抱えて不器用な生き方を強いられて来た二人の大学生女子の出会いから動き出す次への助走が静かに沁みます。
６年前にやはりtiffで観た同じ吉野竜平監督の『スプリング・ハズ・カム』より深刻な生活背景ですが、さり気なく庶民目線から小さめに優しく人間を見つめる感覚は変わりません。
大学卒業後に出身地に帰り県職員の児童福祉士に就職内定している赤毛の変わり者“ホリガイ”を佐久間由衣さんが表面上は屈託ないけど内情は複雑な感じを上手く演じ、受けになる少女期にある事件に巻き込まれた痛手を抱えながら周りとあまり関わらずに生きてきた一年後輩の“イノギさん”を演じる奈緒さんが実に巧みな内面の演技で魅了します。
“ホリガイ”が、なぜ児童福祉士を目指したかに付随した“イノギさん”との出会いの意外な進展模様の次に、それぞれが関わる人間模様が“ある事柄”を引き寄せ伏線が回収される構成がなかなか侮れません。現代日本の世知辛さを背景に人と関わることで、例え少しでも光が差すかも知れないと云うメッセージはしっかり受け取れました。
