池波正太郎文学の重要作である『鬼平犯科帳』を、昨年の珠玉作である『仕掛人・藤枝梅安』二部作と同じ制作環境で、脚本も引き続き大森寿美男氏が手掛けての映画化なので、かなり期待をしていました。
十代目松本幸四郎さんが長谷川平蔵を演じ、その若い頃を幸四郎さんの実子である八代目市川染五郎さんが演じ、火付盗賊改・鬼平誕生譚と云う位置付けの構成で中々に興味深い物語りが進行します。
同時に中村ゆりさんが演じる"おまさ"が鬼平の密偵となるエピソードを濃く絡めたり、出番が少なくとも志田未来さんや松本穂香さんの女性陣に印象深い見せ場を与えている部分が女性軽視の悲哀な時代背景に反比例するそれぞれの力演が見ものです。ただ池波文学の真骨頂とも言うべき江戸の粋な料理が軍鶏鍋と長芋酒くらいしか登場しなかったのは消化不良でした。
映画感度が凄く高かった『仕掛人・藤枝梅安』に比べると、若干テレビっぽい印象が拭えませんでしたが、今後の日本映画コンテンツを世界への発信すると云う意味でも時代劇は必要不可欠だと思っているので、『鬼平犯科帳』を映画館で観られる意義は大きいです。
