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悪は存在しないのmoobyooのレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
5.0
自然環境とイマドキな思考は共存できず、静寂に異物が混じるとどうなるのかを、現実と上っ面さを常に天秤に掛けながら究極な長回し撮影と遠回しな行間空け構成で投げかけます。

今いったい何を観せられているのだろうと云う感覚の連続と、何気ない場面と会話の先に腑に落ちる解答が常に秘められるヒューマニズムは圧巻というほかありません。

ある説明会のあらましやら、車を運転しながらの他愛のない会話にニヤニヤさせられたり、蕎麦屋での落語の様なオチに思わず映画館内に笑いが巻き起こる人を喰った繋ぎがあったりしながら、それ誰(何)の目線?という不穏なカメラアングルで観客を翻弄する構成が侮れません。

次は何を観せられるのだろうとと云う濱口竜介監督作品群に通じる与件を、敢えてメジャー枠でない本作一本の中で巧みに実践してしまった果ての『悪は存在しない』と云う題名を集約するラストの展開には寡黙に唖然とさせられますが、観終わって色んなモノを拾い集めて考えて自分なりの解釈を導き出す帰り道もまた楽しいトンデモナイ傑作です。
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