yuki

君は永遠にそいつらより若いのyukiのレビュー・感想・評価

4.9
冒頭の、真っ赤な自転車が横倒しされている映像がいつまでも瞼に残る。

心を開いて傷や苦しみを見せたとき
「そこにいて助けられなかったことが悔しい」
誰を責めるでもなく降りてきた返事。
こんな誠実に寄り添う言葉、初めて聴いた。

バカと言う方がバカ。
人の痛みに無知と言う方が無知。無神経。

「ここから逃げたい」「もうイヤだ」
己の弱さを振り払いたいと動かした手が、誰かの心に小さな風を起こすことがある。
元気出して立ち向かえ!と明るく照らされるのが萎えるとさえ思われるとき、そんな微風が心地よい慰めに感じられて安堵することがある。

人を助けることが、かつての自分自身まで救われたと感じられることがあるのはなぜだろう。
人は自らの痛みに向き合うだけでは、決して癒されないものがある。

性別も関係なく魂の触れあいとしか呼べない行為がカタチは性愛と同じに見えてしまうこと。それすら残酷だろうか。

ヤスダの巨根は受け挿れてもらえないと嘆く。
ヤスダ、受け挿れる側の恐怖や苦痛、それをあなたは想像できる?
ちっちゃくて可愛い女の子が、絶句するほど深い傷を負い、必死で誰にも悟られまいと(でも心の奥では誰かと繋がりたいと切望しながら)健気に生きていることが解る?

ラスト、べつのカタチで真っ赤な自転車が再登場する。
あまりに自然なしぐさで、感動を覚えることすら忘れていた。

ホリガイ、あなた、ちゃあんと気づいているよ。
イノギさんも、私たちもちゃんとそれを見ているよ。
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