まさ

君は永遠にそいつらより若いのまさのレビュー・感想・評価

3.7
なんとなく青春ものかなという思いで鑑賞。開始しばらくは、展開の方向が掴めず、少し迷子になりそうにもなった。しかし、作品中盤から一気に展開。青春ものとは括られない、この作品で届けられようとした深いメッセージにグッと心が捕まえられた。児童福祉司への就職が内定している主人公堀貝。そしてひょんなことから知り合う同じ大学の3年生の猪乃木。彼女たち、そしてその周りの者たちのどこにでもありそうな大学生活。朝イチの授業の代返、卒論のためのアンケート、ベテラン並みに勤めあげるバイト、くだらないことで盛り上がれる飲み会。そんな日常の影にある傷や孤独。闇に押し潰され、社会には届かない声。その声に気付くことを自身に課す堀貝。そして劇中で明かされる児童福祉司への志望動機。彼女は不器用で、言葉はとっ散らかっているかもしれないけど、そのストイックなまでの彼女の温かい眼差しは闇を照らす光だ。そう言えば、以前仕事が立て込んで立ち行かなくなり、目の前が真っ暗になりそうになっていたときに、隣の部署の先輩が声を掛けて飲みに誘ってくれたことがあった。話を聞いてもらったことも嬉しかったけど、こんな俺のことを見てくれてる人がいると感じれたことがありがたく、救いになった。光に照らされた闇は、次の光にもなる。世の中は確かに闇に、そして届かない声に溢れている。しかし、弱くてか細いものではあるけれど、光も散らばっている。その弱くてか細い光が少しでも多くの闇を照らしてほしい。この作品はそんな願いを改めて感じさせてくれた。
まさ

まさ