hikari

アウステルリッツのhikariのレビュー・感想・評価

アウステルリッツ(2016年製作の映画)
4.8
元強制収容所。今やここはこんなに観光客が集まる場所なんだね。
正面ゲートのARBEIT MACHT FREI(働けば自由になれる)の文字。入っていく人と帰っていく人の見せ方も流石だった。
サングラスの人が多くて、揺れる陽炎も暑い日だったのが伝わってくる。サングラス越しに見るホロコーストはどう見えるのだろう。
スマホで写真を撮る人、カメラを首から下げてる人、自撮り棒で記念撮影する人、焼却炉の前でポーズを決める人、飲食する人、音声ガイドやマップを片手に見て回る人、電話する人、犬をカートで散歩させる人、台詞はほとんどなく固定カメラで人を映しているだけなのに物語を感じる。し、皮肉だった。
90分、飽きることがなかった。
セルゲイ・ロズニツァ監督凄いな。
時々ガイドさんの説明が字幕で出るので、一緒に見て回っている気分になる。
老若男女、人種も様々。表情も様々。
人が着てる服にも意味があるような気がしてくる。

ラストの方でスペイン語でガイドさんが「何か質問や意見がある方いますか? なし?それもひとつの答えですね」
っていうのが何ともかなしくなる。

多くを語らずとも当時のことを感じることができる素晴らしいドキュメンタリー。
でも、ただの"観光地"で終わってしまっているのでは、と哀しくなる。
そんな博物館は、コロナ禍で大変な経済難に陥っていたらしい。
過去のこの事実は忘れ去られてはいけない。
私達は感じて学習するべきなのに。
なんとか閉館せずに続いて欲しい。

『夜と霧』も本当に素晴らしい本なので、ぜひこちらも合わせて読んでほしい。
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