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水を抱く女のSCALAのレビュー・感想・評価

水を抱く女(2020年製作の映画)
4.0
"私を捨てたら殺すわよ"


水の精霊「ウンディーネ」の神話をモチーフに、哀しい宿命を背負ったヒロインが織りなす切ない愛憎の行方をミステリアスかつ幻想的な筆致で綴ったダークファンタジー・ラブストーリー、、、


"愛する男に裏切られたとき、その男を殺して水に還らなければならない"という神話を現代に置き換えた話で、さも現実のようにあるいはマボロシのように見えるバランス感覚と海底のような深藍の色彩感覚が秀でた作品だった。

基本的にはロマンスなのだが、ベルリンという街の歴史に加えて、そこで暮らす男女の運命的な邂逅と別離そして再会を冷たさと悲哀に満ちたトーンで描いていて、バッハの旋律がそれをさらに切なく色付けする。

ホラー的なエッセンスも含まれており、特にプールのシーンから最後に手に握られていたものが分かるラストまでの流れが本当に圧巻で美しさすら感じた。

彼女が彼の身代わりになったとも解釈できるし、振り返れば出会いのシーンから既に2人の未来を予期していたかのような小道具の使い方には思わず痺れた。

神話を型どった物語とはいえ、とても90分とは思えないほど濃密な面白さで個人的にはあと30分長くても全然良かったと思えるくらい好きな作品だった。


"Stayin' Alive"
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